老後について・人生について考える
定年を迎えたサラリーマンについて書かれた小説、「終わった人」内館牧子著 を読みました。
読み始めると面白くて止められず、2日で一気に読了。
老後とは、人生とは。少し切ない気持ちになりつつ考えさせられることの多い小説でした。
内館牧子著「終わった人」の簡単なあらすじ
東大卒で大手銀行に勤め順調に出世していった主人公、田代壮介が、子会社に出向、転籍させられ、そしてそのまま定年退職を迎えます。
しかし彼はまだ60代の前半で、まだまだ若く、これからの自分の進む道、居場所作りに悩むことになります。
仕事が好きで、仕事一筋の人生が一転、暇を持て余す毎日に。
プライドが高い故に、今の自分の状況を受け入れることが出来ず、輝かしい学歴と職歴が却ってマイナス面にでるばかり。
仕事、恋愛、夫婦関係・・・。
紆余曲折を経て、彼は、彼の故郷である岩手県盛岡市の町、年老いた母親、高校の同級生たちにより、少しずつ心境が変化していきます。
盛岡市にある進学校出身の主人公。彼の同級生たちもとても優秀で、卒業後は皆輝かしい道に進んでいます。
しかし、同窓会で数十年ぶりに会ってみると、人生はいろいろなのでした。
彼は、優秀なかつての同級生たちの老後の生き方を知ること、そして故郷の町の息を吸うことで、自分のこれからの本当の幸せ、生き方について考えさせられることになるのです。
岩手の魅力を堪能できる
岩手といえば、石川啄木、宮澤賢治を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
主人公は岩手県盛岡市出身なので、物語の中では石川啄木の歌や宮澤賢治について多く触れられており、盛岡の豊かな自然の描写と相まって、郷愁を感じさせられるところが多くありました。
岩手を旅してみたいと思わずにいられない、旅情を感じる物語としても楽しめました。
おわりに
小説の「あとがき」に国際政治学者の坂本義和氏の言葉「重要なのは品格のある衰退だと私は思います。」が引用されていて、これは国家を論じたものではありますが、著者はこの言葉に非常に共感を持ったそうです。
国だけでなく、人間もそうなのではないでしょうか。
過去の栄光にしがみつかず、衰えて行くことをしっかり受け止め、その上でこれから生きる道を模索する。
心豊かな暮らしを実現するためには、現役時代から様々な視点で物事を見たり、頭をやわらかくしておくことが必要なのでしょう。
サラリーマンの夫にもぜひ読ませてみたいと思っています。