遺伝子情報から犯人が特定できるシステム
マイナンバー制度など、これからの時代、様々な個人情報が管理されるようになり、漠然とした不安を感じることがあります。
東野圭吾著「プラチナデータ」は、国民の遺伝子情報から犯人を特定できるシステム開発をめぐるミステリー小説です。
テレビで刑事もののドラマを見ていると、犯人の残した髪の毛のDNAから犯人が特定される、ということがあります。
この場合のDNA鑑定とは、髪の毛や血液などが、ある人物のものであるかを確認するだけのものであり、DNA鑑定をする対象がいなければ成り立たない方法であると言えます。
この小説の中では、国民のDNA情報を国の監視の下、捜査機関が必要に応じて利用できることになります。
つまり、全国民のDNA情報を管理すれば、犯罪が起きたとき、現場に残された犯人の毛髪や血液、僅かな唾液や汗などから採取したDNAを、膨大なDNAデータと照合して簡単に犯人を挙げることが出来るのです。
便利だけれどこわい社会
本当にこんなシステムが出来たら、便利ですね。
こうなると、テレビドラマやミステリー小説によくある、刑事さんが地道に聞き込みをしたり、現場に何度も足を運んで推理する、といった地道な作業は必要がなくなります。
簡単に犯人を捕まえられるということは、社会にとって良いことだと思います。
また、簡単に犯罪がばれてしまうということは、犯罪の抑止にもつながることでしょう。
しかし、自分の遺伝子情報を国に管理されるということに抵抗感を持つ人は多いのではないでしょうか。
それでも、近い将来には現実になりそうな予感がします。
おわりに
先日たまたま見ていたテレビ番組で知ったのですが、医療分野において、遺伝子技術の進化により、ガンの根治はもう目前のことであるそうです。
遺伝子に関してもそうですし、またAIなど、さまざまな分野において、人類の技術は凄まじいスピードで進展しているそうです。
あと10年もしないうちに、今では想像も出来ないことが次々と起こるのではないでしょうか。
楽しみでもあり、少しこわいことでもあります。
この物語のDNA捜査システムも、実際に開発され、いつの日か使われる可能性は十分あるように思います。
近い未来に起こり得る状況にこわさを感じながら、ページをめくる手を止めることができず、一気に読み終えました。
たくさんの謎解きがあり、最後まで飽きることなく楽しめた作品です。