いつか必ず向き合わなければならない介護問題
私の両親は共に70代前半です。
今のところ大きな病気も怪我もせず、趣味を楽しみながら元気に暮らしています。
そんな自分の親もいつの日か、この世からいなくなってしまう日が来るのです。今はとても想像できないことですが。
でも、その日はいつか必ずやってくるのです。
そして、避けて通れないのが介護問題です。
私の実家は遠方にあります。
遠距離介護をするのか。
自宅で引き取って介護をするのか。
私が引き取るのか、それとも姉弟が引き取るのか。
施設に入れるのか。
そんなに遠くない未来を少し想像してみることは出来ますが、実際に介護が始まると、もっともっとたくさんの問題が生じてくるのでしょう。
今から心配しても仕方のないことではあるのですが、覚悟はしておかなくてはいけません。
葉真中顕著「ロスト・ケア」
介護について問題を投げかける、素晴らしいミステリー小説があります。
葉真中顕著「ロスト・ケア」です。
物語は、老人を四十数人殺した男に死刑判決が出されるところから始まります。
実家が裕福であるゆえに、父親を高級老人ホームへ入居させることができる検事。
シングルマザーで経済的に苦しい中、母親の自宅介護に苦しむ中年女性。
身体と精神が不自由な父親の介護をたった一人でこなす独身男性。
一生懸命仕事をしていても、報われないと感じる介護職員たち。
様々な人の思い、苦悩があります。
介護の政策には不備がたくさんあり、介護職員も、介護者も疲弊しています。
そして、尊厳を失った老人も哀れです。
終わりの見えない介護。
介護職の青年の言葉は重いです。
介護の世界に身を置けば、誰でも実感する。この世には死が救いになるということは間違いなくある。
また、作中に印象深い箇所がありました。
最近、格差なんて言葉をやたらと聞くが、この世で一番えげつない格差は老人の格差だ。特に、要介護状態になった老人の格差は冷酷だ。安全地帯の高級老人ホームで至れり尽くせりの生活をする老人がいる一方で、重すぎる介護の負担で家族を押しつぶす老人がいる。
ますます重い負担になるであろう介護
重い介護の負担に耐え切れなくなり、悲劇が起こるニュースを時々耳にします。
これは決して他人事ではありません。
これから高齢化がどんどん進んで行きます。
介護職はなり手が少なく、十分な介護サービスを受けることも、今後はさらに難しくなっていくでしょう。
家では介護が出来ないような状況になったとしても、簡単に施設に入ることも叶わないかもしれません。
私にどんな介護が出来るのか。
大変だったけれどやり切った、という思いとともに親を見送ることが出来るのか。
親は幸せな最期を迎えることが出来るのか。
自分の老後はどうなる?
親を見送った後、気が付けば自分もすっかり歳をとっていることでしょう。
30年後はどんな時代になっているのでしょうか?
私はどんな風に老後を生き、どんな最期を迎えるのか。
こればかりは自分の意思でどうすることも出来ません。
子どもにたくさんの迷惑をかけて、死んでいくのかもしれません。
想像しただけで切なくなります。
しかし、もしかしたら30年後は、介護ロボットに介護されることが普通のことになっているかもしれません。
心が通わないロボットに介護されるのは寂しいことかもしれませんが、息子や娘に辛い思いをさせるくらいなら、かえって機械にやってもらう方が家族にとっても本人にとっても幸せであるといえる状況もあるかもしれません。
どう考えても、今よりもさらに老人人口は増えるわけですから、大変な社会になっていることは間違いないでしょう。
老い、そして死。誰もが避けて通れない道です。
誰にも迷惑をかけることなく、安らかにあの世へ行くことは夢のまた夢なのかもしれません。